この項ではサウンドクリエイターが映像を扱う際に問題になりやすい知識をまとめています。
サウンドクリエイターは多くの場合、映像に合わせて音や音楽を制作する場合がありますし、音付け用の映像を自ら用意しなければならない場合もありますので、最低限の映像に対する基礎知識が必要となります。
ドロップとノンドロップ「あれれ、だんだん音がずれてくよ」
これはきちんと覚えてないとサウンドクリエイターの誰しもが一度は痛い目に合う映像の罠です。また、ゲームで鳴る音楽は基本的にループですし、効果音は基本的にスイッチの考え方で鳴るため、「長い映画みたいなムービーシーン」などは、そこまでメインの業務になることが少ないため、フレームレート、ドロップ、ノンドロップについては忘れがちになってしまい危険です。
タイムコードには、大きく分けて、
1秒間に29.97フレーム(1秒が29.97枚のパラパラ漫画)のドロップフレーム
1秒間に30フレームの(1秒が30枚のパラパラ漫画)ノンドロップフレーム
の2種類があります。
この2つはまともに比べるともちろん実時間にズレが出てきますので、29.97フレームの方はフレームを間引いて帳尻合わせをしています。
1分のずれを計算すると、
29.97フレームの場合 「29.97×60 = 1798.2」
30フレームの場合 「30× 60 = 1800」
ということは、約2フレームのズレがありますから「分」ジャストのタイミングで「2フレーム」を間引くということをしているのですが、そのままですと1時間経つと逆に12フレーム足りなくなりますので、10分の倍数に当たる(0分、10分、20分、30分、40分、50分)のタイミングでは間引きしないという、さらに帳尻を合わせをしています。
このことが何に問題になるかと言いますと、長い映像にドロップのつもりで作業していて、頭から一本の音で書き出して貼り付けて実はノンドロップだったor長い映像にノンドロップのつもりで作業してて、頭から一本の音で書き出して貼り付けて実はドロップだった場合は映像が進むにつれて段々音がずれていくという現象が起こります。
恐ろしいことに、1分に2フレーム程度の小さな時間のズレですので、思いっきり長いムービーではっきりずれが分かる場合はともかく、そこそこ程度の長さですと「あれ?音がずれてるような…でも気のせいかな…ん?なんかソフトがおかしいのか?」「え、これプログラムのせいじゃないか?」「機械的な仕様のせいだよ!レイテンシだよ!」などと、後で気がついた時に致命的な勘違いを生み易いです。
これを防ぐためには、
「受け取ったムービーのプロパティーを見てフレームレートを確認する」
「事前に画像チームに決まりごとを確認しておく」
「MA作業するセッションのフレームレートをムービーに合わせる」
などが大切です。
では、ドロップとノンドロップがどのように使い分けられてるかというと、大体以下のような感じです(思い込みは厳禁です!)
・ドロップフレーム(29.97)が使われる場合。
テレビ番組やドラマなど、実時間に忠実でなければいけないもの。ムービーとかでも実写のPVやDV作業の場合もこちら。
ゲームのムービーシーンなどでそこだけ実写撮影が行われている場合などは、素材がこちらの場合が多いです。
・ノンドロップフレーム(30)が使われる場合。
DVD制作とかパッケージビデオとかテレビが関係ないもので、実時間とタイムコードのズレをそんなに気にしなくてもいい場合。画像をROM管理している場合や短いCG素材、カット素材とかもこちらが多い。ゲームの中身の部分はこちらが多い。
注意点として、その他にもフレームレートは様々です。
秒間25フレームの場合もあれば、もっとフレーム落としているアニメの場合もありますし、極端にフレームを増やすことにより独特の滑らかさを表現している場合もあります。
もう一点、よくある失敗例として、
アミューズメントゲームなどの制作の終盤となり、「音付けムービーを書き出すのが困難なので、実機でプレイしている画面を撮影して音付けをして欲しい」というような場合、その撮影する際のフレームレートを実機に合わせておかなければならないという点です。
音で映像のデジタル化を例えると「静止音だけはない」
このことは覚えておくといつか役に立つと思います。
映像のデジタル化は多くの場合音でも例えることができます。
- 画像解像度⇒音の場合はサンプリングレート
- 色深度⇒音の場合はビットレート(これはフレームレートと間違いやすいです)
しかし、フレームレートだけは音では例えることができません。
何故ならば音は常に連続データですので、「静止音」というものがないからです。
フレームレートとは「静止画」を秒間何枚のパラパラ漫画にするかというレートですので、必然的に音では表現ができません。
コーデック
コーデックとは映像を変換する際のアルゴリズムのことで、用途に応じ、様々なバリエーションがあります。
音付け用の映像がDAWで開けない場合は変換を行う必要がありますし、逆にその映像を返す際は映像側が開けるフォーマットにしなければいけません。
このことはプロジェクトの開始時にしっかりと打ち合わせおくことが必要です。
また、MacのDAWの場合、多くの場合クイックタイムmov形式が得意なソフトが多いですので、素早く変換が行えるよう、最低限Adobe社のメディアエンコーダーによるバッチ処理は覚えておくと便利です。
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