サウンドクリエイターの計算系知識

この項ではサウンドクリエイターの業務において役に立つ、計算方法の知識をまとめています。
サウンドは数値で扱う方が素早く対応できる局面が多いため、覚えておくと作業効率の向上に繋がります。

 

 


ディレイタイム計算「テンポを割って拍を出す。You too?」


ディレイを音楽的に使う場合は、その音楽のテンポから狙った拍の時間を計算することができます。
「BPM120」とか「♩=120」となっている場合は「1分間にその数だけ四分音符が鳴る速さですよ」ということですので、1分、つまり60秒をそのテンポで割った数字が一拍の時間となります。
例えばテンポ120なら60÷120=0.5で、一拍が0.5秒となり、エフェクターなどで表記されてるmsec(ミリセック)とは1000の一秒単位ですので、0.5秒なら500msecとなります。
つまりテンポ120で4分音符1拍分のディレイをかけたい場合は500msecに設定してやればいいということです。
同様に、4分音符の4分の1が16分音符、半分が8分音符、倍が2分音符、4倍が全音符、付点なら各々1.5倍となります。

余談ですが、よくディレイ系のエフェクトのプリセットに「You too?」とか「You two」とか「to you」というものがあり、テンポに対して付点8分のディレイタイムに調整されていることがありますが、これはU2という世界的に有名なバンドが付点8分ディレイをとても効果的に用い、その技を有名にしたからです。

 


ループポイント計算「何処でループさせるか分かればループはすぐ作れる」


小節のタイミングとおりの場所でループさせている曲の場合、いちいちDAWソフトに貼り付けてそのテンポのセッションを作って貼り付けてみて…というのは、サウンドプログラムを組む場合、多くの場合数値にて管理するため効率が悪いです。

例えば4分の4拍子でテンポ150で32小節の曲、ということが分かっていれば、以下の計算式でループポイントを割り出すことができます。

「60(1分)÷150(テンポ)で4分音符一拍分の長さ」
「×4(一拍数)で1小節分の長さ」
「×32(小節数)で曲の長さ」

つまり60÷150×4×32=51.2秒がこの曲のループポイントとなります。

このように一拍を出したり、ループポイントを計算したりすることは、プログラムに密接に関わってくることですので、曲のファイル名やリストにてテンポや拍数などの情報を管理しておくことは大切なことです。
プログラムだけではなく、メダルゲームやアミューズメントの場合、サウンドのテンポは電飾にも関わってきますので尚更重要です。

明らかにテンポや秒数管理が必要だろうというコンテンツの場合、テンポと拍子を入力すると、1小節あたりのmsecを割り出すようなマクロを仕込んだエクセルを作っておくと便利です。

 


ループの裏技「素早く作るのにはお尻を切って頭に付ける」

 

楽曲をループさせる際、実際にやってみれば簡単にわかりますが、同じ音をコピーして並べてループさせたい音のお尻と頭をクロスさせてやれば上手くいきます。

ここで盲点なのですが、要は元の音のループさせたい任意の箇所以降を、フェードアウトさせたものをカットして先頭にミックスさせてやるだけで同じことになります。
そしてカットするポイントを計算する方法はループポイント計算で述べたとおりです。
この作業は「波形編集ソフトで完結させた方が効率がいい」ということを覚えておきましょう。


8ビットバイト計算「1Gbitは何MB?」

「~ビットバイト」とは「何ビットで1バイトとするか?」とういう定義です。
現代においてはまず間違いなく「8ビットで1バイト」なのでここは真剣に考えなくて大丈夫です。

この計算が必要になるのは、サウンドメモリなどで「容量は1Gbitです~!」と言われたときに、「えっと…メガバイトで言うとどれくらい…?」となった際に計算する場合です。

この場合単純に8で割ればいいですので、例えば1Gbitなら、1G=1024を8で割って128MBということがわかります。

同様にインターネットの1秒間の通信速度などもこの計算方法でOKです。
1Gbpsなら1秒間に128MB転送できるということです。
例えば1Gbpsの通信速度の機器で100GBのデータ転送をする場合、
100GB=102400MB÷128で800秒、つまり13分30秒くらいということが分かります。

協力会社さんなどに「今データをFTPで送ってます~」と連絡する場合、FTPクライアントの転送速度を見て計算すれば「大体~~分くらいでアップ完了されるかと思います」というように伝えることもできます。

藤原章人(ZeeF)
株式会社アットチュード 代表取締役/マニピュレーター/サウンドクリエイター/ BGM、効果音、音声組み込み、音声ROM管理、ミキシング、音声ディレクション担当。 北海道美深町生まれ、兵庫県西宮市出身。 報徳学園高等学校卒業後、バンド活動を経て2000年からサウンドクリエイターとして活動開始。 パナソニックシステムソリューションズ社のゲームコンテンツ(ゴルフやり隊、馬リオンなど2003年以降の全タイトル)のBGM、SE、サウンドプログラム制作を行いながら、 関西の複数のメーカーのコンシューマーゲーム、遊技機のサウンド制作に携わる。 関東に拠点を移してからはロックバンドのメンバーとしてマニピュレーターを担当し、多くの大規模会場にて公演を行いつつ、クリエイターとして複数の会社と数多くのアミューズメントやゲームサウンド制作、コナミ人材養成所での非常勤講師などを行う。 一般社団法人 日本シンセサイザープロフェッショナルアーツ正会員。